手練手管のアレコレ

遊女たちの人気は、姿かたちに、セックステクニック、手練手管できまります。客に、「疑似夫婦」体験をさせるためには、「心」のコントロールも大切な要素。そのため、遊女たちは、さまざまな手法を使い分けていました。

【口説で男のこころを揺さぶりました】

「口説」(くぜつ、くぜち)は、言い争うことです。遊女たちは恋の恨み言を言ったり、痴話喧嘩をしたりといったことを、戦略的に行っていました。なかなか来てくれなかった客が久しぶりに来たときには、「どこかで浮気をしてたんでしょ」「ずっと待っていたのに…」「あなたのことばかり考えていた」などと、恨み言をいいます。

初めての客に対しては、「ただの客とは思えない」「今日あったのは神仏のおぼしめし」などと、心を揺さぶります。普通に聞いてしまえば、ただのウソにしか聞こえませんが、時と場合によっては効果絶大です。おだてられている、これは遊女の手だ、と思っている男性が、「やっぱり俺に気があるのか」「本気で言っているのか」と思い込んでしまいます。

「傾城は まことらしげに 嘘をいい」と川柳にあります。客は、遊女の言葉を「真実」とは思いませんが、「信じたい」と思います。それが吉原の魔力です。

【文書で残す「起請文」】

「起請文」(きしょうもん)とか「起誓文」(きせいもん)と呼ばれたり、「誓詞」(せいし)ともよばれる、遊女の誓いの言葉を紙に残すものがあります。遊女がいくら口で「愛している」「お前さんだけには本気なのさ」と言ったところで、客は「やっぱりウソだろ」と思ったりします。そこで、客を信用させるために神に誓った証拠として、「起請文」に残して渡します。

ただの紙に書くのではなく、熊野神社発行の「熊野牛王」という厄除けの護符の裏に書きます。遊女が書いて、客に渡すのが一般的ですが、3つ作って2つはお互いがそれぞれ持ち、もう1つは熊野神社に奉納して真実みを高めるという手の込んだ方法もありました。

この他にも、自分の髪を客に切らせて持ち帰らせる「髪きり」という手もありました。客に切らせることにより、「共犯」意識を持たせるとともに、遊女の分身を相手に渡すことで「いつでも一緒」気分を高める効果もありました。「爪はぎ」は、自分の爪をはいで気持ちの強さを示す方法です。苦痛を伴う行為なので、本気度を伝える方法としては、「髪きり」よりも効果がありました。実際に爪をはぐことはほとんどなく、妹分の長い爪を切って自分の爪をはいだように見せかけたりしていただけです。

遊女たちは、口説、起請文、髪きり、爪はぎなどのテクニックを駆使して、男たちの心をとりこにしていました。