大門の中は別世界「吉原」の街の構造

現代なら、セックスをしたいと欲望をぎらぎらにした男性は、ソープランドなどの性風俗に行き、射精してスッキリと帰ってきます。情緒を愉しむという側面は薄いですが、快楽を追求することに特化しているのが現代の風俗といえるでしょう。

江戸時代の吉原は、そうしたものとはまったく異なる世界でした。一種の異空間を楽しむ場所でもありました。

【吉原の入口までも楽しみのひとつ】

吉原で遊ぼうとする人は、日本堤を通って吉原の入口に向かう「五十間道」(ごじっけんみち)に入ります。五十間道は大門に通ずる唯一の通りですが、くの字に曲がっているので、通りの入口からは大門は見えません。この通り沿いには、両側に25軒ずつの茶屋が並んでいて、吉原の案内所の役割を果たしていました。

初めて吉原を訪れる客などが、お金を払って見世(みせ)を紹介してもらう場所です。中には、遊べる茶屋もありました。この通りまでくれば、もはや吉原独特の雰囲気がただよい、別世界の情緒が味わえました。

【吉原の内部は毎日お祭り】

大門をはいると右側には「四郎兵衛会所」という番所が、左側には岡っ引き(警官)のつめる番所がありました。「四郎兵衛会所」は、見世から派遣された人たちからなる自警団のようなものです。遊女の脱走も見張っていました。岡っ引きの番所は、町奉行から派遣された公式な警察で、吉原内で解決できない大事件を扱いました。

番所をはさんだ通りはメインストリートの「中之町」。この通りをまっすぐ進むと数本の辻があり、最初の角には青果商が、奥の門には魚屋が市場を開いています。通りのそこここには、さまざまな物売りが並びマーケットのような活況で、毎日祭りが開かれているほどに賑わっていました。「中之町」の両サイドには「引手茶屋」と呼ばれる紹介所が並び、ここで、値段や遊女の取り決めをします。ただし、引手茶屋は高級遊女の紹介所のため、上級の客のみが利用します。

「中之町」に交差する通りが、一般的な客の入れる遊女街。左右に何本かの横丁がありますが、それぞれに遊女の出身地が異なるなどの特徴がありました。横丁には「張見世」と呼ばれる格子のある遊女屋がならび、中で遊女が客待ちをしています。客は格子の外から遊女を見物したり話をしたりして、好みの女性を選んで中に入ります。ここに並ぶのは中クラスの見世です。

もっと安い見世に入りたい人は、横丁を突っ切って奥まで入ります。「切見世」「銭見世」と呼ばれる遊女屋で、とりあえず射精をしたいという人向けの、安くて簡単な、しかし情緒のない見世です。これらの通りを、祭りを楽しむ感覚でめぐるのも、吉原の楽しみの一つです。

吉原の中は毎日がお祭り騒ぎの別世界。遊女たちを見て回ったり、マーケットで買い物をしたりするのも楽しみです。街全体が浮世の世界で、そこにいるだけで楽しめるような場所でした。