客の心得、吉原のしきたり

現代の性風俗では、お金を払ったのに何も性的サービスがないということはまずないでしょう。ソープランドで、ソープ嬢と話だけをして帰されたのでは、何をしに来たのかわかりません。せっかく準備万端整えて店に入ったのに、なにもさせてもらえないのではまったくの無駄金です。

しかし、吉原ではそれは普通のことでした。吉原は男性の性欲を満たす場所ですが、お金を払えば何でもできる場所ではありません。ただの欲望のはけ口ではなく、一種の社交場であり恋愛を楽しむ場所でした。

【1回目、2回目の訪問】

吉原で中級クラス以上の遊女屋に行く場合には、まず「引手茶屋」に相談します。「引手茶屋」は紹介業です。ここで値段や遊女について取り決めて、遊女屋を紹介してもらいます。上級の女を選んだ場合には、遊女が付き添いを連れて迎えに来てくれますが、普通の場合には茶屋の案内で見世へ向かいます。見世の二階の「引付部屋」に案内され、そこで酒や料理を頼み遊女を待ちます。

客は下座に座り、遊女が上座。宴席とはいえ、女は飲み食いはせず会話もしません。「初会」は顔合わせだけのもので、近づくこともなく手を触れることもありません。視線を合わせるだけです。

吉原では一夫一婦制がしかれていますので、一度行った遊女を裏切ることは禁止です。2度目に吉原にいったときには、前と同じ人を指名しなければなりません。どうしてもチェンジしたい場合には、遊女と見世に金を支払わなければなりませんでした。

1度目と同様の形で、茶屋を通して遊女屋に出向き引付部屋で女を待ちます。2回目になると、遊女は少し打ち解けます。酒をくみかわしたり、多少の会話もできます。ただ、名前を呼ばれることはありません。「客人」と呼ばれるだけです。

【3回通って、ようやくセックス】

3回目には客は「馴染み」と呼ばれます。「馴染み」になるには、通常の料金の他に、見世に「馴染み金」という祝儀を払い、遊女にも「床花」という祝儀を出します。結納のようなものでしょう。

見合いと結納が済み、ようやく「夫婦」になれるので遊女はぐっと打ち解けます。この段階で、初めて遊女の部屋に通され宴席をもてます。客は名前で呼ばれるようになり、専用の箸が作られます。箸包には客の紋章がいれられ遊女が預かります。これで「ここはあなたの部屋です」ということになります。こうしてようやく、3度目の正直で、床を共にして思いをとげられるのでした。

吉原には独特のしきたりがあり、初会では顔を合わせるだけで口も聞きません。二回目には会話はあっても性行為はできません。3回通って「馴染み」になると、ようやく性的関係を結ぶことができました。